眼優位性変化(1)

Berardi N, Pizzorusso T, Maffei L.
Extracellular matrix and visual cortical plasticity; freeing the synapse.
Neuron. 2004 Dec 16;44(6):905-8. Minireview

 同誌の2報に対するMinireview。とりあえずこれを読んだ。視覚野ニューロンの眼優位性(Ocular dominance)における単眼遮蔽(Monocular deprivation)の影響は経験依存的可塑性の典型的な例である。細胞外マトリックスECMが発生期・成体の視覚野における経験依存的可塑性に重要であるという内容。
 哺乳類の視覚野両眼性領域では、ニューロンが片方の眼ともう片方の眼からの異なった程度の刺激によって活性化され、両眼が正常ならばニューロンの大多数は両眼性になる。一方、片方の眼を閉じてやると(単眼遮蔽)、ニューロンは遮蔽されていない方の眼に優位になる(開いてる眼からの刺激にのみ反応する)。この眼優位性変化に対する可塑性は発生直後にcritical periodがある。Critical period中の単眼遮蔽が第一次視覚野の両眼性ニューロンに急速な機能的変化を与えることが以前から知られていた。

 (1)まず単眼遮蔽におけるシナプス変化は、スパインなどの構造的変化を直後に伴うということ。(2)ECMが固定化するとSpine motility(構造的変化)を含めたシナプス可塑性が減弱してしまうこと。またECMが成体では固定化すると考えられるので、可塑性の抑制因子であると考えられること。(3)細胞外プロテアーゼtPA(あるいはPlasminも含まれるかも)が単眼遮蔽の重要な調節因子の一つであると考えられること。tPAノックアウトでは単眼遮蔽による変化が起こらなくなり、外来のtPAでレスキュー可。tPAのタンパク分解作用によってスパインの運動性が増加する。

 このレビューでは「活動依存的にtPA耐性な接着分子など*1が発現したシナプスでは、tPAによるタンパク分解に耐性なので維持され、一方非活動的なシナプスはtPAによって不安定化され結果除去される」というモデルを提唱。局所的にtPAが分泌されるというモデルも考えうるが、そうは考えていないようだ。
 tPAによって、非活動的シナプスが除去されスペースが作られたニューロンでは、シナプス変化が起こりやすくなるというイメージでいいのかな…。

*1:tPAのターゲットはいまいち特定化されていない、CSPGs(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)やNMDARやLaminin、Growth factorなど色々な説あり