筋萎縮性側索硬化症(ALS)の薬(2)

ALSについて続き。セミナーを聞いて思ったこと。
(1)病気の原因遺伝子として取れてくる遺伝子は一見面白くないような名前を持っている場合が多くあり、例えば、今回の話にしてもSOD-1はcopper/zinc superoxide dismutase(活性酸素のスーパーオキシドを処理する酵素)である。神経科学をずっとやってきた基礎研究の研究者がスクリーニングや免疫沈降などでこれを拾ってきても、重要だと普通は思わないだろう。何か変なの取れたと感じるだろう。骨格系調節因子や受容体、チャネル、輸送調節分子などなど、そういった分子の方がより「面白そう」と思ってしまう。しかし一見面白そうではない分子の裏に真実は隠れているのかもしれない。

(2)原因遺伝子が見つかったとき、その遺伝子の本来の機能が失われたことによって病気が起こると考えるのは安易な考えかもしれない。SOD-1の場合、本来の機能の喪失が原因なのではなく、むしろmutant分子がアグる(凝集する)ことが原因だと考えられるからだ。そう考えると、家族性障害の原因遺伝子と、突発性障害の原因遺伝子が異なるという現象も理解できるかもしれない。つまり色々な原因遺伝子が見つかるのは、本来の機能とは関係ないからかもしれない。ALSの場合、SOD-1はmutationが入ると確かにアグりやすいが、アグりやすい性質を持つ分子なら別にSOD-1でなくてもいいわけだ。Motor neuronやAstrocyteに発現し、アグることによって細胞死を引き起こしやすい分子ならば、すべてその候補としてなり得るわけだ。しかし原因遺伝子を一覧して、基礎研究から機能を予測して共通点を探していては、その点には気付きにくいだろう。
本来の機能の喪失が直接の原因ではないということは他の様々な病気でもそうかもしれない。例えば、ハンチントン舞踏病のHuntington、アルツハイマー病のアミロイドβプリオン病のPrionなど。