ショウジョウバエDorosophilaのShaker変異体にみられる睡眠減少

Chiara Cirelli, Daniel Bushey, Sean Hill, Reto Huber, Robert Kreber, Barry Ganetzky and Giulio Tononi
Reduced sleep in Drosophila Shaker mutants
Nature 434, 1087-1092 (28 April 2005)

『我々の多くは7~8時間睡眠であり、睡眠不足になると作業能率が大きく低下する。しかし、たった3~4時間の睡眠でへっちゃらな人もいる。これは家系的に受け継がれた性質であると考えられている。どの遺伝子がこの表現型の原因となっているのか決定されれば、睡眠のメカニズムと機能がより明らかになる可能性がある。筆者らは、数時間睡眠し、睡眠が不足すると睡眠リバウンドや作業効率異常が起こるショウジョウバエを用いて変異誘発を行った。9000のmutantラインのスクリーニングから、野生型の1/3しか睡眠しないminisleep(mns)を発見した。mns mutantでは複数の作業で正常にこなし、睡眠恒常性も維持されていたが、睡眠不足による異常はみられない。また、mns mutantはShaker遺伝子の保存されたドメインに点突然変異がある。さらに交配を繰り返して世代を重ね、遺伝的修飾を取り除くと、他のShaker対立遺伝子も短時間睡眠型を示すようになり、mns mutant表現系をレスキューできなくなった。最後に、短時間睡眠のShakerショウジョウバエは寿命が短い。膜の再分極と伝達物質の放出を制御する電位依存性カリウムチャネルをコードしているShakerが、睡眠の必要性や効率を制御している可能性がある。』

人の睡眠時間は7、8時間が標準だが、もっと寝たい人も、3、4時間しか眠らなくても平気な人もいる。こうした差には遺伝子の関与が指摘されていたが、はっきりしていなかったらしい。Shaker遺伝子が、ヒトなどでも同様に働いている可能性がある。
ちなみに、統計的に睡眠時間と死亡率を測定したという研究があって、死亡率が最も低かったのは、男女とも睡眠時間が7時間と答えたグループで、睡眠が長くなっても短くても、死亡率は高くなったらしい。長時間寝ればいいというものでもないというところは面白い。ただ、個人差は激しく、7時間に固執する必要はないようだ。