イメージとは怖ろしいものだ

政治に翻弄される科学者 (横田めぐみさん遺骨事件)

最近、日本は北朝鮮にミサイルを打ち込まれるかもしれないと思い、国連安全保障理事会にて対北朝鮮制裁決議案を採択させようと試みている。また、横田めぐみさんの旦那さんや娘さんがテレビに現れ、「妻は本当に死んだんだ。日本の対応を批判する。」と会見したのは記憶に新しい。こういった一連のニュースを見ていると、北朝鮮の言うことやること、何もかも怪しくて、なんとひどい国だと思いやすい。
横田めぐみさんが生きているかもしれないというのは、庶民的には去年、北朝鮮が出してきた彼女の遺骨が、日本の科学者によって「本人のものではない」と判断されたという報道のイメージによるものが大きいのではないか。「でっちあげの他人の骨をよこしやがって、何というひどい国だ」と思った。
ところが、実は横田めぐみさんの遺骨のDNA鑑定結果にはかなりの疑いがあることをしばらく前に知った。恥ずかしながら、去年の5月ごろの話。5号館のつぶやきさんのブログから抜粋(少し改訂)させてもらいますが、

DNA鑑定をやったのは日本だけ、しかも科学警察研究所ではDNAを抽出できずに判定不能という結果を出しているんにもかかわらず、日本政府は帝京大学の吉井さんの判定結果を採用して、「遺骨は横田めぐみさんのものではない」という判断を公式見解としているようです。当然にも北朝鮮は反論し、結果はねつ造されたものであると1月26日に声明を発表しました。1200℃で焼かれた遺骨にDNAが残っているはずはないという主張です。

吉井さん自身が1200℃で焼いた骨にDNAが残っているのは、自分でもびっくりした、と書かれています。しかも、吉井さんは過去に火葬した骨からのDNA抽出の経験がなかったので、これが結論だとは言えず、いわば硬いスポンジとも言える状態の焼かれた遺骨を素手でさわった誰か他の人のDNAを調べてしまった可能性はあると告白しています。

 吉井さんはその時点でサンプルを使い果たしてしまっていて、再実験はできないとのことです。再実験ができない以上、彼の結果を肯定することも否定することもできず、これも科学としては非常にまずい状況だと言えます。

どうなんだろうか。真実か否かは結局のところもはやわからないが、この話を知っていれば、北朝鮮の主張もある程度納得して聞ける部分もあるのではないだろうか。1200℃に焼かれた骨から、何十サイクルもPCR回して出たバンドが「本物」かどうか、疑わしいと思う生物学者は多いのではないだろうか。

さらに、続きがあって、

なんと、渦中の吉井さんが「横田さんDNA鑑定で実績」ということで「帝京大の講師から、科学捜査研究所(科捜研)の法医科長」に採用されることになってしまいました。「警察が外部の人材を管理職として招聘(しょうへい)するのは極めて異例」だそうです。

民主党の首藤議員による国会での追求)その吉井講師が何と警視庁の科捜研の研究科長になっちゃった。これ、職員ですよ。科学警察の研究所へ出向されるとか、そういうことならともかく、一民間人のおよそ警察的な訓練を受けていない人が警視庁の科学捜査の、捜研の、それの職員になってしまう。それは、多くは今既に言われているように、証人隠しじゃないですか。

今は警視庁の職員になってしまったので公式の見解を私的に出すことはできなくなった

だそうだ。まあ、なんともひどい話だ。この話を報道機関がいっさい報道しないのもかなり問題だと思う。