ボーナスと就活と企業説明会

今日、ボーナスが入った。うちの会社ではほぼ最高に近い額だそうだ。これはもちろん、今年初め頃の景気の好調に影響を受けて決定されたためだ。急速な景気の後退によって、管理職ボーナス一部カットなども覚悟していたが、それほど深刻ではないようで少し安心した。しかし同時に、来年の夏・冬のボーナスは恐ろしく減るかもしれないという、とても悲しい気持ちにもなった。


さて、ニュースを見ていて、内定取り消しや派遣切りなどという言葉を聞くにつれ、自分のときの就職活動(2005年末ごろ)は自分にとっては厳しいものだったが、少なくとも景気が良い時期に活動を行えたことはこの上なくラッキーだったと思った。また、博士の学生やポスドクの就職が、現在の状況の影響を受けて、この後どのようになっていくのか末恐ろしい気持ちでいっぱいである。
ドクターの人間を採用する企業が増加するには、精神的な余裕というか、新しい事業にチャレンジする状態というか、より積極的な経営状態であることが重要であるように思える。しかし、これからの世の中では、例えば一発逆転や、そこまで言わなくても大きな投資を必要とするハイリスクハイリターンな事業は縮小され、必ず儲かるところに資源を集中させよという動きになるだろう。こういう場面には、果たして、ドクターであることが有効に働くだろうかという心配がある。ただ、もしかしたら逆に、より高度で専門的な人材に募集を限るということで、一部の企業では博士採用が増えるのかもしれないが。


ちょっと話が変わるが、新卒就職活動が日に日に悪化していくのを見ていて、新卒にこだわる日本社会は、その時その時の経済状況によって、自分の努力を超える運不運を学生に強いるシステムであると思った。また、新卒にこだわる日本社会はレールから外れたキャリアを進んでいる人間にとって、非常に厳しい風当たりをする社会である。超買い手市場に再び戻っていく日本では、自分のキャリアのセイフティーネットを考えることは、やはり極めて重要なのだろうと悲しくも感じてしまった。


また少し話が変わるが、そういえば、大学院重点化計画では就職氷河期の時期とちょうどリンクしていたという重要な関係がある。満足する就職活動ができなかった、あるいは就職に対する希望が低い、博士課程でより個人能力を高めたいと考えて大学院進学を選択した学生がかなり多かったというものだ。この場合には、大学院重点化計画が就職氷河期の「一時的な避難所」として機能していたと考えられるかもしれない。今回の就職氷河期は博士課程に一体どのように影響するのだろうか。再び、「一時的な避難所」としての機能を果たすのだろうか。それとも、博士課程の真なるキャリア不振が露呈している今日では、キャリアに少しでもリスクを与えるものを忌避するという姿勢によって、本当に誰も来なくなるという状況になってしまうのだろうか。


今年度、母校の大学に赴いて、うちの会社の会社説明会に参加する機会がある。去年度同じように参加したときには、会社説明というよりは人生相談になってしまった。人生相談できるほど経験はないが、学生達より少し前を進んでいる先輩が、どのように考え、どのような世界で頑張っているのか、とても関心があるように思えた。アカデミアの不振と就職活動の困難さという、「前門の虎、後門の狼」に挟まれる学生にとっては、キャリアについて語り合える機会を持ちたいという思いは、とても切実に感じた。
そういえば、来年度の新卒の中に、僕が説明会で話していた後輩がいるらしいというのを聞いた。こういうのは、少しうれしいものである。今年度もできるだけ時間を取って、少しでも学生に有意義な時間を与えられたらと思う。