共感覚

共感覚というものがあるというのを知る。

われわれにとっては何の変哲もないページ上の白黒の文字や発音された言葉の響きが、頭の中では鮮やかな色彩となってほとばしるという人がいる。この人にとって、「two」は青、「2」はオレンジ、「3」はピンクで、「traffic」は青でもあり茶色でもある。

 この人が持つ特殊な知覚は共感覚と呼ばれるもの。共感覚とは、ある刺激を受けたとき、本来の感覚に他の感覚が伴って生ずる現象で、印刷された言葉や数字が色となって感じられたり、香りが形を伴ったり、話し言葉が虹色に見えたりする。

 共感覚者[共感覚を有する人]にとって、新聞はただの白と黒ではなく、全面に赤やオレンジ、青、ベージュ、ピンク、緑などの色が散りばめられたものに見える、と研究者たちは説明する。

なぜこんなことを書いてるかというと、僕が好きなロシアの作曲家、スクリャービン*1共感覚の持ち主だったらしいという記述を読んだからだ。彼にとっては和音はさしずめ複雑に絡み合った色、或いは味だったのだろうか。彼の楽譜を見ながらピアノを弾こうとすると、「ほんとにこの楽譜は正しいのか」と疑問に思う。それはその和音だけ弾くととても不調和音に聞こえるからだ。全体として聞くと違和感なく聞けるところがすごい。

*1:ロシアの作曲家・ピアニスト。前期はショパン(ロマン派)風。後期は神秘和音と呼ばれる和音を用いるなど、調号を廃して無調に進み、独自の世界を作る。