眼優位性変化の続き(3)

Oray S, Majewska A, Sur M.
Dendritic spine dynamics are regulated by monocular deprivation and extracellular matrix degradation.
Neuron. 2004 Dec 16;44(6):1021-30.

 2/2の日記に記載したHenschらの実験と同様に、単眼遮蔽による眼優位性変化において、どのような構造的変化が起きているのかを見た論文。
 Pyramidal neuronにGFPが発現するマウスラインを用いて、Two-photon顕微鏡によってスパイン形態を観察。その結果、単眼遮蔽によってスパインの運動性が上昇していることがわかった。
 運動性上昇はtPA-/-マウスでは抑制され、2/2の論文と一致。単眼遮蔽によってtPAが働き、tPAはスパインが運動できるような、フリーな状態でシナプス結合の変化を許可するような細胞外環境を与えているのではないか、と考えられる。彼らはtPAのターゲットは細胞外マトリックスではないかと考えているようだ。
 その理由の一つとして、過去に以下の論文がある。

Pizzorusso T, Medini P, Berardi N, Chierzi S, Fawcett JW, Maffei L.
Reactivation of ocular dominance plasticity in the adult visual cortex.
Science. 2002 Nov 8;298(5596):1248-51.

この論文では、脳の細胞外マトリックスの主因子であるCSPGs(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)を取り上げている。CSPGsは発生に従って神経細胞の周りに集積し、Perineuronal netという構造を形成する。AdultでCSPGsを分解すると、単眼遮蔽によって眼優位性変化を引き起こすことができる。よって、Matureした細胞外マトリックスは経験依存的な可塑性の抑制因子であり、CSPGsの分解は皮質の可塑性を再活性化させるのではないかと考えられる。