グレゴール・ザムザ

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
(小説の感想8) 向日葵の咲かない夏 ★★★★☆
これもいわゆるどんでん返し系のおすすめミステリー小説でよく目にするタイトルでしたので、興味があり読みました。
『夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した親友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追い始めた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。』というストーリー。
好き嫌いが分かれるかもしれません。Amazonのレビューなんかを読んでいると、「全編通して気持ち悪い」とか「そこかしこの表現がとにかく暗くて鬱になる」とかいう意見がありましたが、確かにそんな気分になります。主人公自身とその周りに気持ち悪い暗い空気がまとわりついていますが、しかしそれさえもおそらく結末のための材料なのでしょう。ストーリーは冒頭から、死んだS君が再び姿を変えて現れるという、いわゆる摩訶不思議な設定ですが、最後まで読んでもらうとスッキリ(?)落ちて気持ちが良いと思います。途中は非常に読み進めにくい小説でしたが、読み終わると、絶賛という程ではないが、いい意味での奇妙な余韻が残る作品。ということで、★4つ。