2つの離れた殺人事件

双頭の悪魔 江神シリーズ (創元推理文庫)
(小説の感想27) 双頭の悪魔 ★★★★★ 
『他人を寄せつけず奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。救援に向かった英都大学推理研の一行は、大雨のなか木更村への潜入を図る。江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる…。』というストーリー。
有栖川有栖の真骨頂、正統派ミステリーの極みと言っても過言ではないでしょう。江神先輩とアリスの事件の第三弾。「月光ゲーム」「孤島パズル」と読み進めてきたのも、この「双頭の悪魔」が読みたかったからでした。川に分断された2つの領域で、双方で殺人事件が起きるというダイナミックな設定もさることながら、700ページというボリューミーな長編でありながら、極めて読みやすい書き方で、次々と読み進めていくことが出来ました。トリックと犯人当てはいつもながら緻密な構成で、ロジックがしっかりとしております。タイトルも素晴らしいですね。ということで、★は5つ!