(8) 自己PRについて

まず、自己PRに限ったことではないが、相手に何を伝えたいのかということをしっかり考えてから話すということを心がけた。また、話す内容を文章にして、骨格を吟味するようにした。自己表現の論理的な組み立ては超重要である。自分はどういう人間で何が好きだから、こう思うとかの道筋が論理的であることはとても重要だと思う。さらに、表現力とプレゼン力も重要である。当たり前かもしれないが、履歴書や面接は相手に読んでもらったり聞いてもらったりするものなのだという基本の重要性も感じた。
PRする目的は何なのかについてだが、全ては「御社に貢献するため」「御社で力を発揮するため」なのだから、自己PRでは全ての言葉が、「御社にプラスになる」というところに向いている。つまり、「何が自分のアピールポイントであり、それが会社にどう役立つのか」というところが骨格である。具体的には、「大学時代に○○サークルに所属していました。そこで私はウンタラカンタラ…」と話すのではなくて、「私は○○力があります。それは大学のサークルに所属している時、○○という経験をして身に付けました。」という感じで話した。そして、「その力を用いて、御社の○○という業務で貢献したい」と続けた。
ちょっと話が変わるが、大学の教官に相談しに行っているときに、こんな話を聞いた。その教官のポスドク時代、所属していた超有名研究室のボスのところには、連日のように各国からポスドクとして雇ってもらえないかというメールや手紙が来る。ある日、そのボスにこう言われた、「なぁ、なんで日本人ってやつはこんな文章ばかりなんだ。このメールを見てみろよ。『私はこういうことが好きで興味がある。あなたの研究室ではこういう技術を持っている。それを学んでこんなことがしたい。』だってさ。こういうやつは決して雇わないよ。」というのだ。どうしてか?と聞いたら、「うちに来てそいつがハッピーになろうとも、顔も知らない、どんな性格かもわからないやつを、なんで俺がハッピーにしてやらなきゃいけないんだ。俺には関係ないじゃないか。」だそうだ。ところが、「そういうメールが山のようにある中、たまに、『私はこんな技術を持っている。あなたの所にはこういう技術がある。それを組み合わせると、こんなことができる。あなたをハッピーにしてあげますよ。』ってなメールが来たら、そりゃー、おお、こいつを採ってみようか、ってなるじゃないか。」なんだそうだ。自分を売り込むことがどういうことなのか、ということを考えさせられたエピソードだった。


ちょっと話が逸れたが話を戻して、自己PRで注意することは、全てポジティブに捉えること。面接でネガティブなことを言う必要はない。ネガティブなことを言えば損になる。自分という商品を売り込むセールスマンになった気で話すことが大事らしい。セールスマンが商品の悪口をわざわざ言うか?ということを考える。また、実はネガティブなこともポジティブに変えれる可能性がある。「○という苦い経験をしましたが、そこから△ということを学び、これからの◇に活かしたい。」というように。
もう1つ、注意することとして、後から気付いたことだが、博士課程の人は、「研究室で、…」「研究室で、…」というようなことをアピールしがちだが(ほとんどの時間、研究室で過ごしているのだから仕方がないのだが)、あまり研究室を多用すると、閉塞感・引き篭もり感を出すようだ。それは、面接官が最初は文系の人が多いということも理由だし、学部卒・修士卒の人が多いというのも理由だろう。研究室にひたすらこもって時間を過ごす学生を理解してくれない場合も多かった。なので、部活やサークルなどのスポーツ、アルバイト、趣味など、多彩な経験で話す方がベターだろう。特に活発な、アウトドアな内容を使ったエピソードの方が好印象を与えるようだ。


「大学時代にリーダーとなってみんなを引っ張った経験を述べよ」「大勢の前で自分の改革案を述べて説得し、グループを改善の方向へと導いた経験を述べよ」というようなエントリーシートもあった。最初はそんな仰々しい経験ねえよ、と思った。だが、集団面接などで聞いていて思ったが、ものすごい経験をしているやつなんて、そんなにいない。せいぜい「数年間ぐらい海外に住んだ経験があり、語学が堪能です。」とかだ。「大学中に会社を興し、経営を学んだ」とか、「スポーツでオリンピック選手候補になった」とか、そんなやつそういない。リーダーになった経験や、改革を行った経験、実は、よくよく考えてみると、結構あったりする。多少脚色してもいいから、明確にはっきりアピールするといいと思う。
初めのうちは、あまり経験が思い出されなかったが、就活最終局面では、いろんな経験による自己PR文が、A4用紙で10枚ほどにもなった。考えているうちにいろいろとあるもんだ。高校の部活、大学受験、浪人生活、大学のサークル活動、アルバイト、趣味、旅行、大学のクラス委員のこと、研究室のこと、研究所内のイベントのこと、などなど。