追記

嗅覚受容体に関しての追記。

嗅覚受容体選択は、免疫系における抗体遺伝子の選択と対比して話される場合が多い。
免疫系における抗体ヘビーチェーン遺伝子の場合には、μ鎖分子が細胞表面に移送されると、それにSykファミリーのプロテインキナーゼが会合し、DNA組み換えに必要なタンパク因子をリン酸化して、さらなる遺伝子再構成(Gene Rearrangement)を抑えると考えられている。
嗅覚系でも遺伝子再構成が起こっているのかどうか、この疑問に対しての研究が最近のNatureに2本出ている。

Eggan K, Baldwin K, Tackett M, Osborne J, Gogos J, Chess A, Axel R, Jaenisch R.
Mice cloned from olfactory sensory neurons.
Nature. 2004 Mar 4;428(6978):44-9. Epub 2004 Feb 15.

Li J, Ishii T, Feinstein P, Mombaerts P.
Odorant receptor gene choice is reset by nuclear transfer from mouse olfactory sensory neurons.
Nature. 2004 Mar 25;428(6981):393-9.

ある一つのOR遺伝子(M71)を発現しているOSNを核移植のドナーにして胚盤胞、胚性幹(ntES)細胞系、さらにクローンマウスを作成した。これらの細胞系のゲノムはM71発現OSNに由来するクローンで、DNA解析ではDNAの再編成やM71遺伝子座における配列の変更は見られない。胚盤胞に注入したntES細胞から分化したOSNでは、M71に限らず、他のOR遺伝子も発現可能である。従って、M71遺伝子の選択は不可逆だが、核移植後にはリセットされ、ゲノムの変化は伴わないということがわかる。

これらのことから、嗅覚系における遺伝子再構成は否定されている。